回収ユニット

湿度スイング法により常温でCO₂を回収

大気中のCO₂を直接取り込む技術は、「Direct Air Capture」の頭文字をとり「DAC(ダック)」と呼ばれ、その際に使われる吸着剤などの開発が世界のさまざまな研究機関で進められています。

CRERC回収ユニットでは、「湿度スイング式DAC」を使った研究を進めています。水を利用し、吸着剤の湿潤状態によってCO₂の吸着・脱離を制御するというものです。吸着剤が乾いた状態ではCO₂を吸着し、水を与え吸着剤を湿らせるとCO₂が脱離します。この技術の最大の利点は、常温の状態で水だけを使って行えること。そのためCO₂の吸着・脱離を行う際に必要なエネルギーを、既存の方法と比較して大きく抑えることが可能です。吸着剤を乾かすことで繰り返し使用できることも、この技術の優れた点です。

湿度スイング法によるCO₂回収

現在は、CO₂をより多く、より速く回収できる吸着剤を、量子化学計算、分子動力学法によって探索しています。また、工場などから排出されるCO₂を化学的に濃縮して効率的に回収する研究も進めています。

合成ユニット

メタネーション触媒を開発

回収したCO₂を新たに石油代替燃料のe-fuelとして合成することによって、既存のインフラをそのまま利用しながら、CO₂の排出量を削減することができます。

一方で、 e-メタンと呼ばれる、CO₂をリサイクルして都市ガスの原料を作る技術「メタネーション」によって合成されたメタンも、一般的な業務や家庭におけるカーボンリサイクルに向けて非常に有用です。e-fuelもe-メタンも、CO₂とH₂(水素)を原料にしてつくられるメタノールを使って合成されます。

燃料合成に向けた触媒の開発

CRERC合成ユニットでは、CO₂からメタノールをより高効率・選択的(同時に起こりうる他の化学より優先的)に合成することを目標に、現在は、メタノール合成に最適な触媒組成を見出し、さらに高性能化をはかるべく開発を推進しています。この研究においては、有機合成化学、高分子化学の専門家による「実験」と、物理化学の専門家による「計算科学」の協働による高い有効性が実証されました。今後は、計算科学や情報科学の分野なども組み合わせることにより、新規触媒開発についても研究開発を進めます。

利用ユニット

燃料・燃焼を化学する唯一の機関

回収したCO₂から合成した燃料を、いかに効率よく利用できるようにするかが、CRERC利用ユニットの研究テーマです。特に、エネルギー密度の問題により、燃料の電動化やガス化が困難(燃料の重量や容積が巨大になりすぎてしまう)である航空、船舶、大型輸送機器、熱利用産業の分野において、液体燃料であるe-fuelに大きな期待が集まっています。燃料の合成から利用までを一貫して研究・技術開発を進めることができるCRERCの存在は、この点においても大きな意義があります。

茨城大学では、複数の種類のガスを混ぜて燃焼させ、その効率を測定することができる、日本全国でも4台しかないという機械を保有しています。また、その隣には最新の高圧縮比単気筒火花点火エンジンが備えてあるため、燃料利用に関する基礎実験から応用実験までを一貫して行える、世界に誇れる研究環境が整っています。これを活かし、e-fuelやe-メタンの利活用に関する研究を進めています。

オープンサイエンスユニット

企業や研究者など国内外での連携を推進

CRERC所属メンバーだけでなく、国内外の分野間の研究者や企業との連携をはかり、国際セミナーやイベントなどの開催を通して基礎研究を推進していきます。また、学生や地域への教育を通してさまざまなアイデア創出を担うとともに、即戦力となる人材の育成にも力を注ぎ、長期的なスパンで研究・技術開発を継続していく環境の整備にも力を注いでいきます。